「私の主宰しているラグジュアリーブランディング研究所のゴールは日本発(初)のラグジュアリーブランドを生み出すことにあります」と長沢氏。ブランドがブランドたる所以は単純な行動経済学で説明できると言う。「そりゃそうですよ、モノやサービスの購入には不安が常に付きまとう。だから間違いのないものを買いたい、となる」と長沢氏は語る。要するにブランドとは不安を払しょくしてくれるもの、と単純化することもできるのだ。
考えてみれば、グッチにせよポルシェにせよ、歴史はあるものの、日本のとらやには遠く及ばない。「彼らはハードルが高いと言われる富裕層に売る、という手段を心得ていたんですね。それは言ってみれば「ナカマウチラグジュアリー」とでもいうか、「仲間うちで、あいつはいいもの持っているな、という評価につながる商品をつくり、販売対象者を絞ったわけです」。富裕層マーケティングの世界でクラブマーケティングといわれる手法そのもので、小さなコミュニティ作りからラグジュアリーブランドが始まる、というわけだ。
長沢氏は続ける。「エルメスにしてもグッチにしても、そもそもファミリービジネスの地場産業からスタートしているわけです。彼らが何をやったかを学べば、日本の地場産業もグローバルラグジュアリーブランドになる素地などいくらでもあるのです」。その通りだ。言いえて妙とはこのことか。当サイトも日本発(初)のラグジュアリーブランド誕生のその日まで、このテーマを考えていくこととしたい。